こんにちは。たかゆいです。民法攻略の第2回では行為能力について解説しました。
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【民法攻略】第2回 権利能力・意思能力・行為能力ってなんだろう
前回は「私法の一般法」である民法の構成についてお話しました。 私人同士の関係・・・つまり、私たちが生活していく上でのルールを定めた法律が民法です。 民法の中でイメージしやすいのは、財産法に関する分野で ...
簡単にまとめると、意思能力が不十分な人などを保護するために「制限行為能力者」という制度が用意されている、というお話でしたね。
この制限行為能力者の制度は試験的にも重要度が高いです。
4種類に分かれていますので、まずはそれぞれの違いを意識して読んでみてください。
今回は未成年者について詳しく解説していきます。
制限行為能力者は4つの類型に分かれている
制限行為能力者制度は以下の4つがあります。
- 未成年者
- 成年被後見人
- 被保佐人
- 被補助人
この中で一番身近なのは未成年者ですね。
また、福祉の分野に興味のある方であれば成年後見人なども聞いたことがあると思います。
受験勉強として、法律用語として聞くと身構えてしまうかもしれませんが、そんなに難しいものではないので一つずつみていきましょう。
未成年者
(成年)
第四条 年齢二十歳をもって、成年とする。
(未成年者の法律行為)
第五条 未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。
2 前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。
3 第一項の規定にかかわらず、法定代理人が目的を定めて処分を許した財産は、その目的の範囲内において、未成年者が自由に処分することができる。目的を定めないで処分を許した財産を処分するときも、同様とする。
皆さんご存知の通り20歳未満は未成年とされていますが、未成年者も制限行為能力者として法的に保護されています。
成年擬制
未成年者が婚姻(結婚)した場合には、成年者として扱われます。
これを成年擬制と言います。家庭を持ったら大人扱いに変わりますよってことです。
一度婚姻による成年者となったら、離婚をしても未成年者には戻りません。
未成年者の行為能力
未成年者は法定代理人の同意がないと法律行為をすることができません。
例えば、未成年者が免許を取ったから自動車を買いたい、とディーラーに行っても未成年者単独では勝手に購入することができないんですね。
もし法定代理人の同意を得ないまま法律行為を行なった場合は、未成年者本人か法定代理人などが取り消すことができます。
未成年者の法定代理人とは
未成年者の法定代理人は、通常であれば親権者(父母)ですが、
親権者がいないとき、または親権者が(財産の)管理権を有していないときには未成年後見人が法定代理人となります。
原則:親権者
例外:親権者がいない
親権者が管理権を有していない
→未成年後見人
未成年後見人は一人とは限らず、必要があるのなら複数選任することができます。
また、法人も未成年後見人になることができます。
法定代理人ができること
法定代理人には、以下の権限があります。
- 代理権
- 同意権
- 取消権
- 追認権
これらの言葉はこれから勉強していく中で何度も聞く事になりますので、しっかり覚えておきましょう。
代理権・・・未成年者を代理して(未成年者の代わりに)法律行為を行うことができる
同意権・・・未成年者が法律行為をすることに同意を与えることができる(車を買っていいよ、と許可を出す)
取消権・・・未成年者が同意を得ずに行なった法律行為を取り消すことができる
追認権・・・未成年者が同意を得ずに行なった法律行為を追認することができる(法律行為に後から同意を与えること)
未成年者でも単独でできる行為がある
未成年者といえども、全ての行為に法定代理人の同意が必要なわけではありません。
もし全部に保護者の許可が必要だとすると、子どもはコンビニでジュースすら買えませんよね。
それでは社会が困ってしまうので、こういったケースもきちんと民法に規定されています。
上記にあげている民法5条3項がこのケースのことです。
他にもいくつか法定代理人の同意が必要ない行為がありますのでまとめて覚えておきましょう。
- 法定代理人が処分を許した財産の処分
- 単に権利を得、又は義務を免れる法律行為
- 営業を許された未成年者の、その営業に関する行為
- 遺言・追認など一部の身分行為
- 未成年者が単独で行なった法律行為の取消し
「法定代理人が処分を許した財産」は2パターンある
5条3項を見てもらえればわかる通り、法定代理人が処分を許した財産には2パターンあります。
使用目的を決めて処分を許した財産と、使用目的を決めずに処分を許した財産です。
使用目的を決めずに処分を許した財産とは、簡単に言えばお小遣いのことなので、未成年者がどのように使おうと自由です。
しかし、「学費にするように」など使用目的を決めて処分を許した財産は、未成年者はその使用目的の範囲内でしか使えません。
学費のお金で買い物をした、となると未成年者が単独でできる行為ではなくなり、法律行為の取消しの対象となります。
単に権利を得、又は義務を免れる法律行為
具体的には、誕生日プレゼントをもらうなど、負担のついていな贈与を受けたりすることです。
未成年者に不利益にならないことであれば、法定代理人の同意がなくとも良いことになっています。(5条1項)
遺言・追認など一部の身分行為
身分行為については民法の家族法の分野で詳しくやっていくことになりますが、ここでは一部の身分行為については未成年者が単独でできることを覚えておいてください。
まとめ
制限行為能力者という言葉だけ見ると非常に遠いものに感じてしまいますが、誰でも子どもの頃は未成年という制限行為能力者でした。
子どもの頃は判断能力が未熟なので、両親や周りの人が未成年者の代わりに判断したり、買い物をしたりしてくれているんですね。
家族だからと言えばその通りですが、民法では法定代理人への代理権や同意権が定められています。
身近なことですので、しっかり自分や周囲の人に置き換えてイメージしてください。